「余命3か月だからフォローして」投稿でフォロワー急増

2025年4月、TikTokでスニーカー配布活動を通じて若者の支持を集めていたインフルエンサー・まぁくんが、自ら「末期がん(ステージ4)」で「脳に転移もある」「余命は半年」と告白し、ネット上に衝撃が走った。
「死ぬ前に夢を配りたい」「命がけでやり遂げたい」と語る姿に、応援コメントが殺到。中でも10代を中心とするフォロワーからは、「死なないで」「奇跡が起こると信じてるよ」といった励ましの言葉が並んだ。
「みそきんで治りました」動画が炎上の火種に
しかし、5月26日。まぁくんは突如、「みそきん」というインスタントカップラーメンを食べ、「味噌菌の力で病気が治りました!」と笑顔で語る動画を投稿。立ち上がって見せ、「本当に力がみなぎってきた」「これからは恩返ししていきます」と宣言した。
SNSは騒然となった。特にファンからは怒りと困惑の声が相次いだ。
「余命宣告はなんだったのか」
「泣いて応援してた自分がバカみたい」
「よりによって、なんで“味噌菌”なんだよ…」
「ラーメンでがんが治る」と断言するような演出に、がん患者やその家族からも強い批判が寄せられている。
医療関係者も苦言「ステージ5は存在しない」
まぁくんはかつて、「自分はステージ5の末期がん」と語っていた。だが、がんにはステージ0〜4までの分類しか存在しない。
「ステージ5」は医学的には存在せず、細胞診の「クラス5」と混同している可能性があるが、誤った情報が無批判に広がったこと自体が問題視されている。
ある医師はSNSでこう指摘する。
「命に関わる情報はセンシティブであるべき。注目を集めたいがために病気を演出するのは、社会的責任が問われます」
まぁくんは何者なのか? 商材販売や特商法違反の過去
まぁくんを巡っては、過去にも「スニーカー配りで集めたフォロワーを使い、InstagramでFXサロンの勧誘をしていた」との指摘がある。参加費は50万円。「お金持ちになりたければこの講座に入って」とする言葉に、多くの若者が参加し、結果として返金トラブルに発展したケースも確認されている。
さらに、商品の販売時に必要な「特定商取引法に基づく表記」を掲載せず、申し込んできた相手の個人情報を逆に利用するような行為も報告されている。
こうした前科があるにもかかわらず、「今回は本当に病気かもしれない」と思わせる巧妙な演出に、多くの人がまたしても信じてしまった。
SNSに吹き荒れる“冷笑”と“絶望”
みそきん動画の投稿後、X(旧Twitter)では皮肉混じりの投稿が相次いだ。
「厚労省、みそきんを医薬品に認定しろ」
「病院も薬もいらん、味噌菌がすべてを解決」
「本当にがん患者の前で同じこと言えるのか?」
また、若いファンの中には、今回の件で初めて「ネットの闇」に触れたという声も見られる。
支持者との温度差
ネットでは、まぁくんの支持者を情弱と揶揄する声も出ている。社会経験が浅く、人を疑う習慣のない層が、今回のような「涙の訴え」に感情的に反応してしまう。
「フォローしてって言われたから」
「死ぬって言ってたのに、戻ってきてうれしい」
「やっぱり味噌菌ってすごい!」
こうした言葉が並ぶ一方で、実際に詐欺被害に遭った経験のある層からは、冷ややかな視線が注がれている。
SNS時代の“信じたい人”と“信じさせる側”の構造
インフルエンサーの言葉がメディアを超える影響力を持つ時代。だがその言葉が、事実と異なるものであった場合、信じた側だけが傷つく構造がここにある。
まぁくんは謝罪や訂正を一切行っておらず、「注目が集まった時点で勝ち」とすら感じさせる振る舞いだ。だがその陰で、泣いた子どもたち、心から信じたファン、そして本当に病と闘っている人々がいることを忘れてはならない。
実はマンジャロ痩せ説が濃厚?
さらにここへきて、SNSでは「いや、これ“がん”じゃなくて“マンジャロ”で痩せただけじゃないか?」という疑惑まで飛び交っている。
マンジャロとは、糖尿病治療薬として開発された「チルゼパチド」の商品名。食欲を抑え、血糖値を下げる作用があるが、最近では美容目的の“痩せ薬”として利用され、海外セレブから国内インフルエンサーまでこぞって使っているとの噂が絶えない。
SNSでは以下のような声が飛び交った。
「マー君、がんってより、マンジャロやろ」
「病院行かずにラーメン食って復活は無理ゲー。マンジャロ疑惑に一票」
「“死にます”って言ったわりに、スニーカーとマンジャロ配ってて草」
確かに、がん治療による副作用としての痩せではなく、マンジャロ由来の体重減少なら、激痩せしてもピンピンしている“見た目と言動のギャップ”も説明がつく。
とはいえ、マンジャロを使用したか否かの真偽は本人しか知らない。もっとも、今の流れなら「実はマンジャロでした」宣言の方がまだ誠実にすら思えてくる。
終わりなき“演出”の代償
まぁくんが本当に病気だったか否かは、もはや焦点ではない。問題は、その言葉と行動が一貫して「信頼」を裏切り、「感情」を利用し続けてきたことにある。
SNSは自由な発信の場であると同時に、公共的な影響力を持つメディアでもある。その中で“命”をコンテンツに変える行為は、たとえ冗談でも、多くの人の心を踏みにじることにつながる。
そして、「また騙されたくない」と感じた人が、次に誰かを信じられなくなる——そんな連鎖が生まれる前に、私たち自身も一度「それは本当か?」と問い直す冷静さを持つ必要があるのではないだろうか。
なぜ、みそきんだったのか?
ちなみに、“みそきん”の発売元であるYouTuberヒカキン氏側からは、今回の件について一切のコメントは出ていない。だが、SNS上では一部のユーザーが冗談交じりにこう呟いている。
「ヒカキン、万能薬つくっちまったな」
「厚労省、これガチで動くのでは?」
もちろん“みそきんでがんが治る”という科学的根拠は一切ない。だが、現代は“ウケれば真実”と化してしまう、フィクションとリアルの境界線が曖昧な時代でもある。末期がんからの奇跡の復活の鍵は、まさかの“みそきん”だったということ自体が「なんでそこでみそきん!?」「点滴とかじゃなくてカップ麺で復活すんな」と、総ツッコミが飛び交う状況を作りだしているのだから、まぁくんの狙い通りだったのかもしれない。
一部では「ヒカキンと顔が似てるから感情移入しやすかった説」「“きん”ってついてるから治りそうに見えた説」「商品名がもうギャグ説」など色々な考察が広がる。中には、「厚労省がみそきんを保険適用にする日も近い」「次回作は“しょうゆきん”で骨折治すらしい」など、もはやノリが都市伝説か新興宗教の様相を呈している。
結局のところ、「なんでみそきんだったのか?」という問いは、“炎上させるための完璧なアイテムだった”という以外に答えはないのかもしれない。
まぁ、まぁくんのような人物が再び現れないためにも、「ちょっと待てよ」と踏みとどまる冷静さを、私たち一人ひとりが持ちたい。