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サステナビリティ情報「後出し」容認へ 金融庁が段階開示と保証制度を整備 限定的保証で企業負担に配慮

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サステナ情報開示に2年間の猶予措置、金融庁が制度設計を柔軟化

サステナビリティ情報開示ルール
dall-eで作成

金融庁は、2027年3月期から義務化されるサステナビリティ情報の開示に際して、一部の情報については、有価証券報告書(有報)の提出時点ではなく、後日に開示する「二段階開示」を認める方針を固めた。スコープ3(サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量)など、算定が難しい項目が対象で、制度開始後2年間に限って半期報告書までの開示を容認する。

これは、時価総額3兆円超の東証プライム上場企業を皮切りに開示が始まり、順次対象企業が拡大される中で、企業側の実務負担を考慮した対応と位置づけられている。5日に開かれた金融審議会の作業部会で正式に提示された。

 

初年度は「開示」義務、翌年度から「保証」義務へ

新制度は「開示」と「保証」を分けて導入する二段階構成を基本とする。初年度に開示義務が発生し、翌年度からはその開示内容の信頼性を担保する「保証」が義務付けられる。金融庁はこの保証について、「合理的保証」ではなく、「限定的保証」にとどめることを明言している。

ここでいう「限定的保証」とは、保証業務実施者が企業の開示した情報について明白な誤りがないかをチェックする程度のもので、情報の正確性を直接検証する「合理的保証」とは異なる。限定的保証は、あくまで“重大な見落としがないこと”の確認にとどまり、財務諸表の監査のような網羅的検証を意味しない。

具体的には、限定的保証では業務実施者が「重要な虚偽の表示がないことを確信するに足る証拠がない」と結論づける一方、合理的保証では「重要な虚偽表示がないと確信するために十分な監査証拠を得た」とする違いがある。

この制度設計は、財務情報と異なり、サステナ情報が将来予測や定性的記述を多く含むことを踏まえた現実的判断といえる。

 

現場の声:「段階的で助かる」「とはいえ人手が足りない」

あるプライム上場企業のサステナビリティ担当者は、「スコープ3の算出や人的資本情報の整理には時間がかかる。二段階開示と保証の限定化は実務を知っている人間からすれば、非常に現実的な判断だ」と評価する。

一方で、「開示と保証のタイミングがずれることで、社内の関係部門の調整が煩雑になり、報告業務が長期化するリスクもある」との懸念もあがる。また、別の上場企業のIR担当者は、「保証と聞けば“監査のような厳密な検証”を想起するが、限定的保証の中身を経営層や投資家にどう説明するかが難しい」と語る。

統合報告書などを後日に発行する実務慣行との整合も課題であり、金融庁は今後、有報の提出期限自体の見直しも視野に入れて検討を進めるという。

 

自主規制機関と登録制度の整備も進展

保証を実施するには登録が必要となり、対象者には品質管理体制や人的体制の構築、そして専門的な研修受講が求められる。保証業務を担う機関については、日本公認会計士協会などの既存機関の活用案と、新たな自主規制機関の創設案が並行して検討されている。

保証の質を確保する観点から、国際的な基準であるISSA5000との整合性も重視されており、日本独自の保証基準(仮称)と倫理規則の整備が今後の焦点となる。

 

今後の課題:制度の拡大とグローバル整合

今回の「猶予措置」は移行期対応に過ぎず、中長期的には開示範囲や保証範囲の拡大が求められることは避けられない。CSRD(欧州企業サステナ報告指令)への対応や国際整合性の観点からも、日本の制度設計はグローバルスタンダードとの歩調合わせが不可欠とされる。

金融庁は「制度を単なる規制として導入するのではなく、企業の持続可能性経営を支援する仕組みに育てたい」との立場を示している。

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寒天 かんたろう

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ライター歴26年。月刊誌記者を経て独立。企業経営者取材や大学、高校、通信教育分野などの取材経験が豊富。

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